物流倉庫の特定技能採用|2027年開始に向けた7ステップ完全ガイド

物流倉庫の特定技能採用

物流分野の特定技能採用の流れは、①受入れ可否の自己診断 → ②受入れ体制の整備 → ③募集・選考 → ④雇用契約の締結 → ⑤支援計画の策定 → ⑥在留資格の申請 → ⑦入国・配属・継続支援、の7ステップで整理できます。 物流倉庫分野は2026年1月23日の閣議決定で特定産業分野および育成就労産業分野に追加され、運用開始は2027年4月が予定されています。特定技能1号の受入れ見込数は令和8年度からの3年間で1万1,400人とされ、これが令和10年度末までの受入れ上限として運用されます。他分野と異なり、直接雇用に限定されること、倉庫業法上の類型に該当すること、入庫・在庫・出庫管理の機能を持つ情報システムを利活用していることが受入れの前提条件です。制度の骨格は2026年6月公布の上乗せ基準告示で固まった一方、技能評価試験の実施要領と分野別協議会の加入要件は本記事執筆時点(2026年8月)でも公表されておらず、2026年度は「準備の年」と位置づけられます。

[画像①:記事冒頭。倉庫内でピッキング作業を行う多国籍のスタッフ(横位置・明るいトーン)。alt「物流倉庫で働く外国人材と特定技能制度」]

「求人を出しても応募が来ない」「繁忙期は派遣スタッフの確保すら難しい」——EC需要の拡大と物流の2024年問題を経て、倉庫現場の人手不足は採用課題から経営課題へと性質を変えました。そこに登場したのが特定技能「物流倉庫」分野です。

ただし、ここで多くの企業が同じ誤解をします。「2027年に始まるのだから、2027年に動けばよい」という理解です。実際には、受入れには上限が設定され、上限に達した分野では在留資格認定証明書の交付が停止され得ます。制度が使えるかどうかは、動き出した時期でほぼ決まります。本記事では、公表済みの一次情報のみを根拠に、採用の流れと2026年度に着手すべき準備を整理します。

目次

物流倉庫分野の特定技能制度はいつから始まるのか

物流倉庫分野は、令和8(2026)年1月23日の閣議決定により、特定産業分野および育成就労産業分野に追加されました。これにより特定技能の対象は19分野へと拡大しています。国土交通省は、育成就労制度の運用開始である令和9(2027)年4月1日を起点として、本分野の受入れが始まる前提で制度整備を進めています。

重要なのは、「制度に追加された日」と「実際に雇用できる日」が別物であるという点です。閣議決定は制度設計の決定であり、これを受けて省令・告示の整備、技能評価試験の開発、分野別協議会の設置が順に進みます。2026年6月26日には物流倉庫分野の上乗せ基準告示(国土交通省告示第787号・第788号)が公布され、受入れ企業に課される独自要件は確定しました。一方で、試験実施要領、運用要領別冊、協議会の加入要件は、国土交通省が公表する最新の記載(2026年6月時点)で「調整中」とされたまま、本記事執筆時点(2026年8月)でも更新は確認できていません。

時期確定した事項企業側の動き
2026年1月23日分野追加の閣議決定・分野別運用方針の策定自社が対象事業者かの確認
2026年2月末まで技能評価試験の試行試験を終了採用計画の骨子づくり
2026年6月26日上乗せ基準告示の公布(要件確定)情報システム・支援体制の整備
2026年度中(予定)試験実施要領・運用要領別冊・協議会の公表協議会加入、パートナー選定
2027年4月(予定)制度の運用開始選考・雇用契約・在留資格申請

つまり2026年度は、制度が動き出す前に社内要件を満たしにいく「助走期間」です。要件を満たしていない状態では、2027年4月を迎えても申請の土俵に立てません。

2027年4月開始までのスケジュールと準備期間は

準備の順序を誤ると、待ち時間だけが増えます。物流倉庫分野で特に時間を要するのは、採用活動そのものではなく、受入れ要件を満たすための社内整備です。

  • 2026年前半:可否の見極め — 倉庫業法上の登録状況、業務委託関係、貨物自動車運送事業の許可内容を棚卸しし、自社がどの受入れ類型に当てはまるかを確定させます。
  • 2026年後半:システムと体制の整備 — 入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を持つ情報システムの利活用状況を点検し、不足があれば導入・連携を進めます。並行して支援体制の構築方針(自社実施か委託か)を決定します。
  • 2027年初頭:申請準備 — 協議会の加入要件が公表され次第、速やかに手続きできるよう社内の意思決定ラインを整えておきます。募集条件・賃金テーブルの設計もこの時期までに終えるのが一般的な流れです。

システム導入や賃金規程の見直しは、稟議・予算化を含めると数か月単位の作業になります。逆算すると、着手が2026年度後半にずれ込んだ企業は、初年度の受入れに間に合わない可能性が高まります。

育成就労制度との違いと併用の可能性は

物流倉庫分野は、特定技能1号と育成就労の両方が同時に対象となった珍しい分野です。両制度は目的も入口の要件も異なるため、混同したまま計画を立てると採用戦略を誤ります。

比較項目特定技能1号育成就労
制度の目的即戦力人材の確保人材の育成と確保
就労開始前の技能要件物流倉庫分野特定技能1号評価試験に合格試験合格は不要
就労開始前の日本語要件「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上A1相当以上、または認定日本語教育機関等での講習受講
受入れ見込数(上限)1万1,400人(令和8年度から3年間)6,900人(令和9年度から2年間)
本人意向による転籍制度上、転職が可能転籍制限期間は1年
雇用形態直接雇用に限る直接雇用に限る

併用は可能です。むしろ制度設計上、育成就労で受け入れた人材が3年間の育成期間を経て特定技能1号へ移行するキャリアパスが想定されており、国土交通省は「育成・キャリア形成プログラム」を策定するとしています。同プログラムは、講習受講・資格取得、日本語能力、マネジメント経験の3要素で構成される見込みです。即戦力を短期で確保するなら特定技能1号、5年以上の定着と現場リーダー育成を見据えるなら育成就労との組み合わせ、という整理が実務的です。

[画像②:H2「業務範囲」直前。倉庫の入出庫エリア/検品作業の俯瞰カット。alt「特定技能物流倉庫分野の対象業務イメージ」]

物流特定技能で従事できる業務範囲はどこまでか

物流倉庫分野に設定される業務区分は「物流倉庫」の1区分のみです。従事できる業務は、物流倉庫において行われる貨物の入出庫、保管その他の倉庫内各種作業に限られます。国土交通省が示す主な業務は、入出庫貨物の受渡し・検品、貨物の移動、保管庫への格納、ピッキング、流通加工などです。

これに加えて、日本人従業員が通常あわせて行う関連業務への付随的な従事は差し支えないとされています。具体例として、事務所への連絡や報告、作業場所の整理整頓・清掃、台風等の接近に備えた貨物の移動や雨水侵入防止措置、安全衛生会議や教育訓練など職場で開催される会議体への参加が挙げられています。

注意が必要なのが「流通加工」の線引きです。国土交通省は、流通加工を物資を流通させるために適した状態にするための加工と定義し、小分け再包装、タグ取付け、ラベル貼り、セット組みなどを例示しています。一方で、商品そのものの機能を完成させたり性能を向上させたりする作業は製造工程の一環であり、流通加工には含まれないとしています。

この線引きは実務に直結します。倉庫内に簡易な組立・加工ラインを持つ現場では、同じ作業員が「流通加工」と「製造」を横断的に担っているケースが少なくありません。在留資格で認められた業務区分の範囲を超えた就労は、企業側の届出義務違反や不法就労助長のリスクにつながるため、制度開始前に作業工程の棚卸しを行い、業務範囲の内外を線引きしておくことが求められます。

フォークリフト・仕分け・検品は対象に含まれるか

検品とピッキングは、国土交通省が示す主な業務として明示されています。仕分けについては業務例として個別に列挙されてはいないものの、「倉庫内各種作業」に含まれると解するのが自然です。

フォークリフト作業の扱いは、やや慎重な理解が必要です。公表資料上、業務類型に「フォークリフト運転」という項目が独立して置かれているわけではありませんが、「貨物の移動」を実現する手段として現場で不可欠な作業であることは明らかです。ここで問題になるのは在留資格ではなく労働安全衛生法上の資格です。

  • 最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転する場合:フォークリフト運転技能講習の修了が必要
  • 最大荷重1トン未満の場合:特別教育の受講が必要
  • 母国で取得した資格は原則として日本国内では通用せず、国内での受講・修了が前提

外国人材が入国後すぐにフォークリフト作業へ入れるとは限らないため、技能講習の受講日程と日本語での受講負担を、配属計画に織り込んでおく必要があります。傾向として、初期は検品・ピッキング・流通加工から入り、日本語と安全意識の定着を確認したうえで有資格作業へ広げる設計が現実的です。

自動車運送業との業務範囲の違いは何か

「物流」とひとくくりにされがちですが、特定技能の制度上、物流倉庫分野と自動車運送業分野は別の特定産業分野です。取り違えると、在留資格で認められない業務に従事させる事態を招きます。

比較項目物流倉庫分野自動車運送業分野
中心となる業務倉庫内の入出庫・保管・検品・ピッキング・流通加工自動車の運転による貨物・旅客の輸送
所管国土交通省国土交通省
主な追加ハードル情報システムの利活用、協議会加入日本の運転免許の取得
育成就労の対象対象(2027年4月〜)対象外

見落とされやすいのが、トラック事業者も物流倉庫分野で受け入れられるという点です。一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者が、自ら占有する倉庫で倉庫作業を行う場合や、荷主の配送センターで有償の倉庫作業を担う場合は、物流倉庫分野の受入れ類型に該当します。ただしこの場合でも、認められるのは倉庫作業であり、配送のための運転業務を担わせることはできません。ドライバー確保と庫内人材確保は、別ルートとして計画する必要があります。

[画像③:H2「採用の流れ」冒頭。7ステップのフロー図(自社作成推奨・横長インフォグラフィック)。alt「特定技能物流倉庫 採用の流れ7ステップ」]

特定技能「物流倉庫」採用の流れは具体的に何ステップか

特定技能「物流倉庫」の採用は、次の7ステップに整理できます。海外在住者を新規に受け入れる場合と、国内在留者が在留資格を変更する場合とで手続きの一部が異なりますが、企業側が踏む段取りの骨格は共通です。

ステップ主な実施事項主な担い手
① 受入れ可否の自己診断受入れ類型の確認、情報システムの利活用状況の点検自社(経営・現場)
② 受入れ体制の整備支援体制の方針決定、賃金規程の点検、協議会加入の準備自社/登録支援機関
③ 募集・選考求人条件の設計、書類選考、面接自社/人材紹介機関
④ 雇用契約の締結直接雇用での特定技能雇用契約の締結自社
⑤ 支援計画の策定1号特定技能外国人支援計画の作成自社/登録支援機関
⑥ 在留資格の申請認定証明書交付申請または変更許可申請自社/行政書士
⑦ 入国・配属・継続支援オリエンテーション、定期面談、各種届出自社/登録支援機関

所要期間は、候補者の所在地、試験の実施時期、審査状況によって大きく変動します。特に物流倉庫分野は新設分野であり、試験の開始時期が2026年6月時点で未定とされているため、固定的な期間を前提に計画を立てるのは適切ではありません。期間を短縮できる余地があるのは①と②、すなわち制度開始前に終えられる工程だけという点を押さえておくべきです。

求人作成から雇用契約締結までの流れは

最初の関門は、選考ではなく自己診断です。物流倉庫分野では、受入れ可能な事業者が次の3類型に限定されています。

  1. 類型A:倉庫業法に基づき国土交通大臣の倉庫業登録を受けた倉庫業者で、倉庫作業を自ら実施する者
  2. 類型B:登録倉庫業者から業務委託を受け、当該倉庫業者が営業に使用している倉庫で倉庫作業を実施する者
  3. 類型C:一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可を受けた者で、その占有する倉庫において倉庫作業を自ら実施する者等

自社がいずれにも該当しない場合、求人を出しても受入れには至りません。類型が確定したら、求人条件の設計に移ります。ここで最も重要なのが報酬水準です。同一の業務に従事する日本人と同等額以上であることが要件であり、既存の賃金テーブルとの整合を欠く設定は、申請段階で問題となります。選考後は、直接雇用による特定技能雇用契約を締結します。派遣形態での受入れは認められていません。

支援計画策定から在留資格申請までの手順は

雇用契約の締結後、受入れ企業は1号特定技能外国人支援計画を作成します。これは職業生活・日常生活・社会生活上の支援内容を定めた計画であり、作成そのものが在留資格申請の要件です。計画は全部または一部を登録支援機関へ委託でき、全部を委託した場合は支援体制に関する基準を満たしたものとして扱われます。

続いて地方出入国在留管理局へ申請します。海外在住の候補者を招へいする場合は在留資格認定証明書交付申請、すでに日本に在留している人を採用する場合は在留資格変更許可申請となります。審査期間は個別事情により幅があるため、繁忙期に合わせた着任日を確定的に約束することは避けるべきです。物流倉庫分野では、協議会への加入が受入れ機関の義務とされています。加入要件と受付開始時期は本記事執筆時点で調整中ですが、他分野では在留資格申請の前までに加入を済ませておく運用が定着しており、物流倉庫分野でも同様の取扱いが想定されます。公表後すぐに動けるよう、社内決裁のルートを事前に用意しておくことが有効です。

入国後の配属・教育・継続支援はどう進めるか

受入れは入国がゴールではありません。就労開始後は、生活オリエンテーション、定期的な面談、各種届出という継続的な業務が発生します。物流倉庫は、重量物とフォークリフトと歩行者が同一空間に混在する環境であり、安全教育の質が定着率と事故率の双方を左右します。指差呼称や危険予知活動を、日本語の暗記ではなく「なぜその動作が必要か」まで含めて伝える工夫が有効とされています。

見落とされやすい実務として、実務経験を証明する書面の交付義務があります。特定技能所属機関は、雇用契約に基づき特定技能外国人を物流倉庫分野の実務に従事させた場合、本人の求めに応じて実務経験を証明する書面(電磁的記録を含む)を交付・提供しなければなりません。将来のキャリア形成に関わる書類であるため、就労開始時点から実務内容を記録・保存する運用を組み込んでおく必要があります。

受入企業に求められる条件と支援義務とは

物流倉庫分野には、他分野には見られない独自要件が複数課されています。制度開始後に慌てて対応できる性質のものではなく、これらが実質的な「参加資格」になっています。

  • 事業者の類型該当:前述の類型A・B・Cのいずれかに該当すること
  • 情報システムの利活用:入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を持つシステム、またはこれに準ずるシステムを利活用していること
  • 連携機器等の継続利活用:上記システムと連携して機能を拡充し、省力化と労働安全衛生の向上に資する機器またはシステムの利活用を継続すること
  • 協議会への報告:これらの利活用状況を、協議会入会からおおむね1年を目途に協議会へ報告し、確認を受けること
  • 類型B固有の要件:委託元の倉庫業者と共同で、特定技能外国人の雇用継続について両者が共同責任を負う旨の協議書を作成・取り交わすこと
  • 協議会の構成員であること、および協議が調った事項に関する措置を講じ、国土交通省の調査・指導に協力すること

情報システム要件は、実質的なDX要件です。紙とベテランの記憶で回している倉庫は、まずシステム導入から着手しなければ土俵に上がれません。逆に言えば、この要件は競合の参入を絞る効果も持っています。

倉庫業許可や労働条件の要件は何か

正確には「許可」ではなく、倉庫業法に基づく登録です。類型Aと類型Bはこの登録を前提としており、類型Cは貨物自動車運送事業法上の許可を前提とします。自社がどの法制度に基づく事業者なのかを、登記や許認可書類まで遡って確認しておく必要があります。

労働条件面では、報酬額が同一業務に従事する日本人と同等額以上であること、社会保険への適切な加入、労働関係法令の遵守が基本要件です。国籍を理由とした処遇差は認められません。

情報システムについては、実務上の朗報もあります。国土交通省は、要件を満たすシステムは倉庫管理システム(WMS)を念頭に置いているとしつつ、入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能が満たされていれば、WMSとして製品化されていないものでも差し支えないとしています。さらに、システムを自社で所有している必要はなく、外国人材が就業する事業所でそのシステムが使える状態にあれば要件を満たすと明示しています。荷主のシステムを利用している委託型の事業者にとって、この解釈は重要です。

支援計画の10項目を自社で対応できるか

1号特定技能外国人支援計画に定める支援は、制度上おおむね次の10項目で構成されます。

#支援項目主な内容
1事前ガイダンス労働条件・活動内容・入国手続等の説明
2出入国する際の送迎空港と事業所・住居間の送迎
3住居確保・生活契約支援住居の確保、銀行口座・携帯電話等の契約補助
4生活オリエンテーション生活ルール、公共機関の利用方法、災害時対応等
5公的手続等への同行住民届、社会保障、税等の手続補助
6日本語学習の機会の提供学習教材や講座に関する情報提供・便宜供与
7相談・苦情への対応理解できる言語での相談対応と助言
8日本人との交流促進地域行事の案内、参加の補助
9転職支援受入れ側の都合で契約解除となる場合の支援
10定期的な面談・行政機関への通報本人および監督者との定期面談、法令違反時の通報

自社で実施する場合は、支援責任者・支援担当者の選任に加え、外国人材が十分に理解できる言語で支援を実施できる体制が求められます。この言語要件が、自社対応の実質的な分岐点になります。日本語のみで対応した「相談窓口」は、要件上の支援として機能しません。

なお、支援計画の全部を登録支援機関に委託する場合、物流倉庫分野では委託先の登録支援機関にも条件が課されます。具体的には、特定技能の協議会の構成員であること、協議が調った事項に関する措置を講じること、協議会に必要な協力を行うこと、国土交通省の調査・指導に協力することの4点です。分野別協議会に加入していない登録支援機関には、支援を全部委託できないという点は、パートナー選定の実務に直結します。

技能試験・日本語要件の内容とスケジュールは

物流倉庫分野では、2種類の技能評価試験が設定されています。育成就労1年目の習熟度を確認する「物流倉庫分野育成就労評価試験(初級)」と、特定技能1号の受入れ開始前に技能水準を確認する「物流倉庫分野特定技能1号評価試験」です。特徴的なのは、育成就労を終了するまでに求められる水準を確認する試験が特定技能1号評価試験とされ、「専門級」に相当する試験が設定されていない点です。試験体系がシンプルな分、特定技能1号評価試験の位置づけが重くなっています。

スケジュール面では、いずれの試験も令和8(2026)年2月末までに試行試験を終え、試験の適正性について了承を得る手続きが進められています。育成就労評価試験(初級)は、2027年4月の育成就労制度開始以降の実施が予定されています。一方、特定技能1号評価試験の開始時期は、国土交通省の公表(2026年6月時点)で調整中・未定とされており、本記事執筆時点でも実施時期は確定していません。

この「試験時期が未定」という事実は、採用計画に直接影響します。試験の実施回数や実施国が固まらない限り、合格者プールがいつ形成されるかを見通せないためです。したがって現段階では、着任日から逆算する計画ではなく、試験情報が公表された時点で即座に動ける準備を整えておく計画が合理的です。

物流分野特定技能1号評価試験の難易度は

試験実施要領は本記事執筆時点で公表されておらず、難易度を断定できる段階にはありません。ここで数値の合格率や出題数を断定する情報には注意が必要です。

現時点で分かっているのは、試験が「特定技能1号として就労を開始するために必要な技能水準を有するかを確認するもの」であり、同時に「育成就労を終了するまでに求められる水準」を測る試験でもあるという位置づけです。分野別運用方針が示す業務範囲から、一般的には入出庫・保管・ピッキング・流通加工に関する基礎知識と、倉庫内作業の安全衛生に関する理解が問われると想定されます。他分野の傾向として、学科試験と実技試験を組み合わせ、コンピューターを用いた方式で実施される例が多く見られます。

企業として現実的な対応は、難易度を推測することではなく、試験対策を担える送出し・紹介ルートを確保しておくことです。新設分野では、既存の合格者が市場に存在しないため、教育機能を持つパートナーの有無が初年度の採用可否を分けます。

JLPT N4とJFT-Basicのどちらが必要か

日本語要件は、試験名ではなく「日本語教育の参照枠」のレベルで定義されています。物流倉庫分野の分野別運用方針は、特定技能1号についてA2.2相当以上の水準を求めており、国土交通省の解説ではA2相当以上(日本語能力試験のN4等)と説明されています。育成就労については、就労開始前にA1相当以上(N5等)の試験合格、または認定日本語教育機関等での相当する日本語講習の受講が必要とされています。

制度就労開始前に求められる日本語水準参考となる試験例
特定技能1号A2.2相当以上日本語能力試験N4 等
育成就労A1相当以上、または相当する講習の受講日本語能力試験N5 等

実務上の注意点として、どの試験のどのレベルが要件を満たすと認められるかの具体的な取扱いは、物流倉庫分野の運用要領別冊で確定する見込みであり、同別冊は本記事執筆時点で調整中とされています。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の取扱いを含め、募集要項に日本語要件を明記する際は、公表後の最新情報を確認したうえで記載することをおすすめします。

[画像④:H2「登録支援機関」直前。日本人担当者と外国人スタッフが面談している屋内カット。alt「登録支援機関による特定技能外国人の支援」]

登録支援機関への委託と自社対応の判断基準は

支援を自社で行うか委託するかは、コストの問題として語られがちですが、実際には体制の持続可能性の問題です。判断軸は次のように整理できます。

判断軸自社対応が向くケース委託が向くケース
受入れ人数少人数を同一拠点で受け入れる複数拠点・複数国籍にまたがる
言語体制母語対応可能な社員が在籍している社内に多言語対応の人員がいない
受入れ経験過去に中長期在留者の受入れ・支援実績がある初めての外国人材受入れである
管理工数人事部門に専任者を置ける現場管理者が兼務するしかない
緊急対応夜間・休日の相談体制を構築できる24時間の相談窓口を外部に持ちたい

なお、支援に要する費用は、委託範囲・受入れ人数・拠点数によって大きく異なります。契約内容については担当者までお問い合わせください。

委託を選ぶ場合、物流倉庫分野では委託先が特定技能の協議会の構成員であることが条件となる点に、改めて注意が必要です。協議会の加入受付は本記事執筆時点で調整中であるため、パートナー候補には「協議会加入の方針と対応スケジュール」を確認しておくとよいでしょう。

委託すべき業務と自社で担うべき業務の線引きは

すべてを委託しても、すべてを自社で抱えても、うまくいきません。境界線は「現場の文脈が必要かどうか」で引くのが実務的です。

委託が機能しやすい業務自社が担うべき業務
事前ガイダンス、入国時の送迎業務指導・OJT・安全教育
住居確保、生活契約の補助現場での日常コミュニケーション
公的手続への同行、生活オリエンテーション評価・処遇の決定とフィードバック
母語での相談対応、苦情処理チーム内の関係構築、配置の調整
各種届出書類の作成補助キャリアパスの提示と実務経験の記録

安全教育と業務指導を外部に委ねることはできません。フォークリフトと人が交錯する倉庫では、指示の伝わり方が事故率に直結します。外部に任せるのは生活と手続き、自社が握るのは業務と安全、という切り分けが、定着率と安全性の両面で機能しやすい構図です。

採用プロセスで失敗しやすいポイントと対策は

新設分野の初年度は、前例が存在しません。他分野の受入れ実務から見て、つまずきやすい類型は次の3つに集約されます。

  1. 要件確認の後回し — 求人と選考を先行させ、あとから類型不該当や情報システム要件の未充足が判明するパターンです。候補者にも自社にも損失が生じます。対策は、①の自己診断を最初に完了させることに尽きます。
  2. 業務範囲の曖昧な運用 — 倉庫内の作業と製造工程が地続きになっている現場で、流通加工の範囲を超えた作業に従事させてしまうパターンです。制度開始前の工程棚卸しが有効です。
  3. 支援体制の名目化 — 支援計画は作成したものの、定期面談が実施されず記録も残っていないパターンです。支援は「実施したこと」ではなく「記録されていること」で確認されます。

いずれも、採用の巧拙ではなく準備の巧拙で決まる領域です。制度開始前に、誰が要件確認を担い、誰が支援を実施し、誰が届出を管理するのかという社内の役割分担を確定させておくことが、初年度の混乱を最小化します。

在留資格申請で不許可になりやすいケースとは

一般的に、不許可・追加資料要求につながりやすいのは次のような事情です。

  • 報酬額の同等性を説明できない — 同一業務に従事する日本人従業員の賃金規程との整合が取れていない、比較対象者を示せない
  • 業務内容と業務区分の不一致 — 提出した業務内容に、認められた倉庫作業の範囲外の業務が含まれている
  • 受入れ類型の説明不足 — 特に類型Bで、委託元倉庫業者との関係や協議書の内容が明確でない
  • 雇用形態の不備 — 実態として派遣・請負に近い就労形態になっている
  • 書類の有効期限や記載内容の不整合 — 発行日が古い証明書類、法人情報の不一致

対策は、申請直前ではなく雇用契約の設計段階で入管実務に通じた専門家(行政書士・登録支援機関)の確認を挟むことです。申請後の修正は、時間的なロスが最も大きくなります。

採用プロセスで失敗しやすいポイントと対策は

支援義務違反によるリスクをどう回避するか

支援義務の不履行は、個別の指摘にとどまりません。届出義務違反や支援計画の不履行が確認された場合、指導・改善命令の対象となり、状況によっては新たな受入れができなくなる可能性があります。物流倉庫分野ではこれに加え、情報システムの利活用状況を協議会入会からおおむね1年を目途に報告する義務が課されており、報告体制の不備も見過ごせません。

回避策は、属人化させないことです。具体的には、定期面談の実施記録、支援内容の実施ログ、在留期限の管理表、届出の提出履歴を一元管理し、担当者交代でも継続する運用に落とし込みます。在留期間の更新失念は不法就労に直結するため、期限管理は個人の記憶ではなく仕組みで担保すべき領域です。

[画像⑤:H2「受入上限」直前。受入れ見込数の内訳を示す図表(自社作成)。alt「物流倉庫分野の受入れ見込数と上限運用」]

受入上限11,400人の競争環境にどう備えるか

分野別運用方針によれば、物流倉庫分野全体の令和8年度から令和10年度までの3年間の受入れ見込数は1万8,300人です。その内訳は、特定技能1号が1万1,400人(令和8年度から3年間、令和10年度末までの上限として運用)、育成就労が6,900人(令和9年度から2年間、令和10年度末までの上限として運用)となっています。

この「上限」は名目ではありません。国土交通大臣は在留者数、有効求人倍率、業界団体を通じた調査、協議会からの状況把握によって人手不足状況を継続的に把握し、受入れ見込数を超えることが見込まれる場合には、法務大臣に対して在留資格認定証明書の交付を一時的に停止する措置を求めることとされています。

同様の運用は、すでに他分野で現実に発動しています。外食業分野では、同分野の特定技能1号在留者数が2026年2月末時点で速報値約4万6,000人に達し、5月頃には上限の5万人を超える見込みとなりました。これを受けて2026年3月27日に受入れ上限の運用方針が公表され、4月3日に農林水産大臣から法務大臣へ交付停止の要請、そして4月13日、入管法第7条の2第4項にもとづき在留資格認定証明書の交付停止措置が実際に実施されました。同日以降に受理された同分野の交付申請は不交付とされ、評価試験の実施も停止されています。特定技能は「必要になればいつでも使える制度」ではないという事実が、すでに実例として示されています。

需要側の数字も、競争の激しさを裏付けています。分野別運用方針によれば、令和6年時点の物流倉庫分野の人手不足数は約1万9,000人。令和10年度には約34万人の就業者が必要になる一方、生産性向上と国内人材確保の取組を継続しても、なお約1万8,300人の不足が見込まれています。ハローワーク経由の求人数対応募人数の比率は2.54(令和6年1月〜12月)でした。1万1,400人という枠は、この不足規模に対して決して大きくありません。

2026年度の準備フェーズで何を進めるべきか

初年度に受け入れられる企業と、翌年度以降に持ち越す企業を分けるのは、2026年度の使い方です。時期別に整理すると次のようになります。

  • 今すぐ着手 — 受入れ類型の確定(登記・許認可・業務委託契約の確認)、情報システムの利活用状況の点検、賃金テーブルと同等性の検証
  • 2026年度前半 — 支援体制の方針決定(自社実施か委託か)、システムの導入・連携が必要な場合の予算化と稟議、社内の受入れ推進担当の任命
  • 2026年度後半 — パートナー(登録支援機関・人材紹介機関・行政書士)の選定と協議会加入方針の確認、募集条件と受入れ人数計画の確定、住居・通勤・生活支援の準備
  • 公表され次第 — 協議会への加入手続き、試験情報にもとづく候補者プールの形成、受入れスケジュールの確定

準備の多くは、制度の詳細が未確定でも進められる項目です。逆に、制度が確定してから着手できる項目は限られています。

採用手続きや受入体制の相談はどこに依頼できるか

相談先は、目的によって使い分けるのが効率的です。

相談先適した相談内容
国土交通省 物流・自動車局 貨物流通事業課物流倉庫分野の制度解釈、受入れ類型、システム要件
出入国在留管理庁「特定技能総合支援サイト」制度全般、在留資格、支援計画の基本情報
行政書士在留資格申請の実務、書類作成、不許可リスクの事前確認
登録支援機関支援計画の策定・実施、生活支援、定着支援
人材紹介機関(有料職業紹介事業者)候補者の募集・選考、送出し機関との連携
業界団体・分野別協議会優良事例の共有、地域の受入れ状況

登録支援機関は、制度上、1号特定技能外国人に対する生活支援・就労サポートを担う機関として位置づけられています。株式会社ICO Japanは登録支援機関および有料職業紹介事業者として、10年以上にわたり外国人材の受入れ支援に携わり、現在150名以上の特定技能外国人の支援を継続しています。物流倉庫分野については、協議会の加入要件を含む制度情報の確認を進めながら、受入れ準備の段階からご相談を承っています。

FAQ:物流特定技能採用でよくある質問

採用から就労開始までの期間はどのくらいか

候補者の所在地、試験の実施時期、審査状況により大きく変動します。物流倉庫分野は試験開始時期が未定であるため、現時点で確定的な期間を前提とした計画は避け、制度開始前に社内要件を満たしておくことが現実的です。

技能実習から特定技能への移行は物流倉庫でも可能か

分野別運用方針では、物流倉庫分野の特定技能1号は評価試験と日本語試験の合格を要件としており、技能実習修了による試験免除ルートは示されていません。新設分野のため該当する実習職種が存在せず、当面は試験合格が前提になると考えられます。

物流倉庫分野で特定技能2号は取得できるか

現時点で物流倉庫分野に特定技能2号の受入れはありません。国土交通省も、本分野で受け入れ可能なのは育成就労と特定技能1号であると明示しています。したがって在留期間の上限を前提とした人員計画が必要です。

人材派遣の形で受け入れることはできるか

できません。分野別運用方針において、特定技能外国人・育成就労外国人ともに雇用形態は直接雇用に限ると定められています。

倉庫管理システムを導入していない場合はどうすればよいか

入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能が満たされていれば、WMSとして製品化された製品である必要はありません。また自社所有も必須ではなく、就業する事業所でシステムが使える状態にあれば要件を満たすとされています。

2027年に「使える企業」になるための最後の一歩

物流倉庫分野の特定技能は、人手不足に悩むすべての倉庫が自動的に使える制度ではありません。倉庫業法上の類型に該当し、情報システムを利活用し、直接雇用で受け入れ、協議会に加入し、支援体制を整えた企業だけが土俵に立てます。そして、その土俵の広さは1万1,400人という上限で区切られています。

外食業分野で起きたことは、この上限が現実に運用されることを示しました。2027年4月に募集を始める企業と、2026年度中に要件を満たし終えている企業とでは、初年度に確保できる人材の質も量も変わります。準備は、今しか前倒しできません。

自社がどの受入れ類型に該当するのか、情報システム要件を満たしているのか、支援体制をどう構築するのか。この3点を整理するだけでも、2027年のスタートラインは大きく前に出ます。

採用手続きや受け入れ体制について相談をご希望の企業様は、こちらからお問い合わせいただけます(https://icojapan.co.jp/contact/)。

[画像⑥:CTA直上。倉庫の朝礼/日本人管理者と外国人スタッフが並ぶ前向きなカット。alt「特定技能外国人の受入れ準備を進める物流倉庫」]

本記事の出典

  • 国土交通省「物流倉庫分野における特定技能外国人・育成就労外国人の受入れについて」(2026年6月時点)
  • 「物流倉庫分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(令和8年1月23日閣議決定・別紙12)
  • 国土交通省告示第787号・第788号(令和8年6月26日公布)
  • 出入国在留管理庁「特定技能「外食業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置について」(令和8年4月13日)
  • 出入国在留管理庁「特定技能総合支援サイト」
  • 労働安全衛生法およびフォークリフト運転技能講習に関する関係法令

記事内の制度情報は、本記事執筆時点(2026年8月)で確認できる公表内容にもとづきます(物流倉庫分野に関する国土交通省の記載は2026年6月時点のものが最新です)。試験実施要領、運用要領別冊、分野別協議会の加入要件は今後公表・変更される可能性があるため、実際の受入れにあたっては最新の公表情報をご確認ください。

シェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次