在日特定技能人材を採用するには?国内在留者の採用フローと実務ガイド

外国人材の採用を検討する際、「海外から呼び寄せる」方法だけを想定している企業は多い。しかし実際には、すでに日本国内に在留し、特定技能の在留資格を持つ外国人が相当数存在する。
出入国在留管理庁のデータによれば、2025年6月末時点で在留資格「特定技能」で日本に滞在する外国人は33万6,196人にのぼり、過去最多を更新している。この層を「在日特定技能人材」と呼び、海外採用とは異なる手続き・コスト・タイムラインで採用できる点が特徴だ。
本記事では、在日特定技能人材の採用に特化し、手続きの流れ・海外採用との違い・採用後の対応まで、実務的な観点から解説する。
在日特定技能人材とは何か
「在日特定技能人材」とは、すでに日本国内に在留しており、特定技能の在留資格を持っている外国人、あるいは技能実習などの別の在留資格から特定技能への変更(在留資格変更)を希望している外国人を指す。
制度上の正式名称ではないが、採用実務の現場では「海外在住の人材」と区別するために使われる概念だ。
在日人材が対象となる2つのルート

ルート①:技能実習2号修了者からの移行 技能実習2号(3年間)または3号(5年間)を良好に修了した外国人は、特定技能の技能試験と日本語試験が免除される傾向がある。日本での就労経験があり、職場環境への適応が進んでいるケースが多い。
ルート②:国内で技能・日本語試験に合格した外国人 留学生や別の在留資格で日本に在留している外国人が、国内で特定技能の技能試験と日本語試験(N4以上相当)を受験・合格するルートだ。現在は16分野すべての試験が国内で実施されており、このルートの人材も増加している。
いずれのルートも、一定の技能と日本語能力を持つことが前提となっている。在日採用と海外採用の違いは何か
採用スピード・コスト・手続き量の比較
| 比較項目 | 在日採用 | 海外採用 |
| 就労開始まで | 1〜2ヶ月(目安) | 4〜6ヶ月(目安) |
| 渡航費 | 不要 | 必要(往復数十万円程度) |
| 現地面接 | 不要(オンライン可) | 必要またはオンライン |
| 在留資格申請 | 変更申請のみ | 認定証明書申請+査証申請 |
| 日本語能力の確認 | 在日実績から判断可能 | 事前確認が限られる |
| 日本文化への適応 | 経験済みのケースが多い | 入国後に時間を要する傾向 |
在日採用の場合、在留資格変更の申請のみで済むため、手続き上の書類量は海外採用より少ない傾向がある。担当者の工数削減という観点からも、在日採用を選択する企業が増えている。
在日人材の特徴
すでに日本での就労・生活経験がある人材は、職場のルール・コミュニケーション・労働慣行への適応コストが低い傾向がある。また、日本での生活基盤が既にある場合、住居探しなどの初期対応も最小限で済むことが多い。
一方、特定技能は制度上転職が認められているため、採用後の定着支援が重要となる点は海外採用と変わらない。
在日特定技能人材の採用フロー
ステップ1:人材のマッチング
在日特定技能人材を専門に紹介する会社に依頼するか、特定技能向けの求人サイトで自社募集を行う。スカウト型のプラットフォームを活用すれば、日本語レベル・経験分野・在留資格の種類などで絞り込んだ検索も可能だ。
ステップ2:面接・選考
在日人材のため、交通費のみで対面面接も実施できる。オンラインでの対応も一般的だ。
ステップ3:内定・雇用契約の締結
特定技能雇用契約を締結する。報酬は同等の業務に従事する日本人と同等以上であることが法令上の要件となっている。
ステップ4:在留資格変更許可申請
現在の在留資格から「特定技能1号」への変更申請を、住所地を管轄する出入国在留管理局に提出する。
ステップ5:一号特定技能外国人支援計画の策定
採用後の義務的支援(10項目)をどう実施するかを計画書にまとめる。登録支援機関に委託することも可能だ。
ステップ6:就労開始
変更許可が下りた時点から就労を開始できる。

在留資格変更申請に必要な主な書類
以下は一般的な必要書類の一覧だ(雇用する分野・状況によって異なる場合がある)。
- 在留資格変更許可申請書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 受入機関の概要書・誓約書
- 技能試験合格証明書(または技能実習2号修了証明書)
- 日本語能力試験合格証明書(技能実習2号同分野修了者は免除)
- 在留カードの写し
- 住民票
書類の種類が多いため、登録支援機関や行政書士に書類作成サポートを依頼する企業も多い。
申請から就労開始まで何ヶ月かかるのか
標準的な処理期間は1〜2ヶ月が一般的とされている。書類に不備がなければ、申請月の翌月〜翌々月に就労開始できるケースが多い。
なお、在留資格変更の申請中であっても、現在の在留資格が有効期限内であれば就労を継続できる。在留期間の期限切れ前に申請することが前提となる。
採用後に必要な義務的支援とは何か
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、法令により義務的支援10項目の実施が求められる。
| 項目 | 内容 |
| 1. 事前ガイダンス | 労働条件・生活情報を外国語で事前説明 |
| 2. 出入国時の送迎 | 入国・出国時の空港送迎 |
| 3. 住居確保・生活の立ち上げ支援 | 住居探し・銀行口座開設などの補助 |
| 4. 生活オリエンテーション | 生活ルール・交通・医療機関などの案内 |
| 5. 日本語学習の機会の提供 | 日本語学習支援 |
| 6. 相談・苦情対応 | 外国人が理解できる言語での相談窓口の設置 |
| 7. 日本人との交流促進 | 地域活動・交流機会の提供 |
| 8. 非自発的離職時の転職支援 | 解雇等の際の就職支援 |
| 9. 定期面談・行政機関への通報 | 状況確認と必要な機関への報告 |
| 10. 各種届出の履行確認 | 在留カード・住所変更などの確認 |
在日人材の場合、住居や銀行口座がすでに整っているケースが多く、項目によっては新規来日者と比べてサポート負荷が低くなる傾向がある。
登録支援機関への委託を検討する判断基準
- 外国人材が使用する言語で支援できる担当者が社内にいない
- 採用人数が少ない(1〜3名程度)
- 初めての外国人材採用で手続きに不慣れ
上記に該当する場合、登録支援機関への委託が実務的な選択肢となる。委託費用は月額2〜3万円程度が相場とされており、10項目の支援業務をアウトソースできる。
採用後の定着支援で押さえておくべきポイント
特定技能は制度上、同業他社への転職が認められている。採用後に定着支援を行わないと、早期離職につながる可能性がある。
定着支援として有効な取り組みの例:
- 入社初期のオンボーディングを丁寧に実施する(職場ルール・期待値の明確な説明)
- 定期的な面談を設け、就労状況や生活面の課題を把握する
- 特定技能2号への移行など、キャリアの見通しを提示する
特定技能2号は更新上限がなく、永続的に在留できる在留資格であるため、長期的な雇用継続を前提とした説明が定着意識の向上に有効な場合がある。
産業分野別の採用傾向
外食業: 居酒屋・焼き肉店・ラーメン店など多様な業態で在日特定技能人材の需要が高い。技能実習経験者は調理補助・ホール業務に対応できるケースが多い。
介護業: 関東・関西・東海エリアを中心に需要がある。在日人材は日本語の基礎力があるため、介護特有の表現(利用者への言葉掛けなど)の習得にかかる時間が短縮できる傾向がある。
食品製造業: ライン作業・衛生管理など標準化されたオペレーションが多く、在日人材のスキルが活かしやすい分野とされている。
その他の特定技能分野: 宿泊・機械加工・自動車整備・運送・物流など、特定技能制度の対象となる16分野では、いずれも在日人材の採用が可能だ。
紹介会社・登録支援機関を選ぶ際の確認ポイント
| 確認項目 | 内容 |
| 在日人材の取り扱い実績 | 海外採用専門ではなく、在日人材の紹介実績があるか |
| 登録支援機関の登録有無 | 義務支援をワンストップで委託できるか |
| 対応言語の範囲 | 採用する外国人材が使用する言語に対応しているか |
| 採用後のフォロー体制 | 定着支援・相談対応の仕組みがあるか |
| 料金体系の透明性 | 成功報酬型か月額固定か。費用の内訳が明確か |
よくある質問
在留資格変更中でも採用内定を出してよいのか
可能だ。在留資格変更申請中であっても、現在の在留資格が有効期限内であれば雇用契約の締結・内定通知は可能だ。就労開始は変更許可が下りた後となる。在留期間の期限切れには注意が必要だ。
在日採用でかかるコストの目安はいくらか
紹介会社経由の場合、紹介手数料は一般的に30〜50万円程度が目安とされている(在留資格・サービス内容によって異なる)。加えて登録支援機関への委託費が月額2〜3万円程度かかる。海外採用と比べると渡航費・現地対応コストが不要なため、トータルコストは抑えられる傾向がある。
技能実習2号を修了した人材は試験なしで採用できるのか
同分野の技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能の技能試験および日本語試験が免除となる傾向がある。採用手続きがシンプルになり、在留資格変更の書類も一部省略できる場合がある。ただし「同分野」であることが条件のため、分野が異なる場合は試験受験が必要となる。
採用できる人数に上限はあるのか
介護分野を除いて、特定技能外国人の採用に人数制限はない。介護分野のみ、日本人従業員数に応じた上限が設定されている。外食・食品製造・工業製品製造など他の分野では、受入体制が整っていれば複数名の採用が可能だ。
在日採用でも登録支援機関は必要か
特定技能1号を採用する場合、義務的支援10項目の実施は法令上の要件だ。在日人材は住居が既にある場合が多く、支援の一部は負荷が軽くなることがある。ただし、支援計画の策定・実施・記録は必要であるため、初めての採用の場合は登録支援機関への委託を検討することが一般的だ。
まとめ
在日特定技能人材の採用は、海外採用と比較して手続き期間・コスト・適応コストの面で有利になるケースが多い傾向がある。一方で、特定技能制度上の転職自由という特性から、採用後の定着支援が重要な課題となる。
制度の仕組みを正確に理解した上で、採用フロー・必要書類・義務的支援の体制を整えることが、採用成功の基本となる。
採用手続きや受け入れ体制についてご不明な点がある場合、または専門的なサポートをご検討の企業様は、こちらからお問い合わせいただけます。
参考:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和7年6月末)」/入管法第2条の5/出入国在留管理庁「特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧・確認表」 ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断の根拠となるものではありません。最新情報は出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。
